かものむすめ
ウクライナ民話
松谷さやか 訳
オリガ・ヤクトーヴィチ 絵
福音館書店
ウクライナに想いをよせて
おじいさんとおばあさんが、キノコ狩りに行き、足が折れているかもと出会って、家に連れて帰りました。それから、ふたりが出かけて帰ると、家の中はきれいに片付けられていて、食事が用意してあるのです。ふたりは出かけるふりをして小屋のかげにかくれていると、うつくしい娘が足をひきずって水をくみに行くのでした。見られたことを知ったかもの娘は……。
『かものむすめ』は、「こどものとも」一九九四年十月号に掲載されました。ウクライナ共和国の画家、オリガ・ヤクトーヴィチさんの美しい絵に注目した編集部の人がウクライナの作品を紹介しようと企画し、日本に届けられた作品です。日本で一番よく知られているウクライナの民話は『てぶくろ』で、最近は、平和について考える絵本を集めたコーナーに並べている書店もあります。
翻訳の松谷さやかさんは、『てぶくろ』に次ぐウクライナの民話として、オリガさんから送られてきた『かものむすめ』を選びました。一九九一年から掲載までの三年間、混沌とした情勢下で郵便事情もよくない中、東京とウクライナのキエフとの間で何度も国際郵便のやりとりがなされました。その間にウクライナ共和国は独立し、ソ連は消滅したことが折り込みふろくに書かれています。まだ今のようにインターネットやメールが発達していない時代に、時間をかけて情熱を込めて製作されたお二人の強い想いに感動を覚えました。
情感豊かに描かれた絵が、かつてのウクライナの美しい森や草花、農村の人々の心温まる暮らしを伝えてくれます。刺繍が「魔除け」の意味を持つソロチカ(シャツ)をはじめとした、色鮮やかな民族衣装がとても繊細に描かれている点も注目です。おじいさんとおばあさんとかもの娘の別れは切ないけれど、日本の民話「つるのおんがえし」に似ていて、私は物語に親しみと懐かしさを感じました。ウクライナと日本の心を繋ぐ一冊です。


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