子どもと絵本を結ぶVol.179 特集:一戦後80年の夏一 にて絵本紹介させていただきました。
『光にむかって』サーロー節子 ノーベル平和賞のスピーチ
くさばよしみ 編
やまなかももこ 絵
汐文社
光の種を蒔く絵本 平和への確かな一歩
2017年12月、ノーベル平和賞の授賞式。受賞者はICAN。正式名は「核兵器廃絶国際キャンペーン」。ICANのメンバーで被爆者でもあるサーロー節子さんがスピーチを行いました…。
終戦80年を迎える特別な年に紹介いただいたこの本書、初めて手にした瞬間、表紙からあふれる静かな光に、まるで吸い寄せられるような感覚でした。 サーロー節子さんは、広島で被爆した当時13歳の少女でした。瓦礫の下から命からがら這い出し、家族を失うという壮絶な体験をされました。結婚しカナダに移住後も、核兵器廃絶を世界に向けて訴え続けてきました。2017年、ICANがノーベル平和賞を受賞した際、被爆者として初めてノーベル平和賞の壇上へ上がりスピーチをしました。
スピーチでは、原爆の被害を受けた当時の様子、現在も核実験が行われている事実、原爆による4歳の甥っ子の死、核兵器の脅威と核の傘下への警告を訴え、多くの人々の心を動かしました。 編者のくさばよしみさんによって、節子さんの英語スピーチを、子どもにも伝わるようにとやさしく翻訳し、日本語の語りに再構築。難しい言葉を使わず、まっすぐに心に響く言葉選びは、真実の重みを失うことなく、確かなメッセージを届けます。 そして、やまなかももこさんのイラストは、苦しみの中にも確かに感じられる希望の光を描き出し、言葉だけでは伝えきれない感情を、静かに、しかし力強く心に届けてくれます。
私たちは、戦争を「知らない世代」として、平和がもたらす意味を深く理解し、その尊さを次の世代へと語り継ぐ責任を負っています。この絵本を手に取り、感じたことを誰かと語り合うことが、平和への確かな一歩になると信じています。 重いテーマを、あたたかく誠実なまなざしで描いている本書は、子どもから大人まで、読む人の心にそっと寄り添い、希望の光を灯してくれる一冊です。


コメント